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最高裁判所第一小法廷 昭和37年(あ)410号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人榊純義の上告趣意について、

所論は、単なる法令違反、量刑不当の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人岡部勇二、同宮本佐文の上告趣意第一点について、

所論は、違憲をいうが、実質は単なる法令違反の主張に帰し、上告適法の理由に当らない。

なお、公社又は指定小売人でない者が、反覆継続してする意図の下に、製造たばこを他に販売する行為は、たばこ専売法二九条二項に違反するものであることは、当裁判所の判例とするところであって(第三小法廷昭和三二年七月九日決定、集一巻八号二〇五五頁、第一小法廷昭和三五年六月二三日判決、集一四巻八号一〇八〇頁各参照)、右判例は、いまなおこれを変更するの要を見ない。

同第二点について、

所論は、違憲をいうが、実質は、追徴、没収に関する一審判決の法律の解釈適用の誤まりを主張するに帰し、上告適法の理由に当らない。

なお、たばこ専売法七五条は、犯則物件またはこれに代るべき価額が犯則者の手に存することを禁止するとともに、国がたばこの専売を独占し、もって国の財政収入を確保するためにとくに必要没収、必要追徴の規定を設け、不正たばこの販売などの取締りを励行しようとする趣旨であると解されること、同法七五条二項にいわゆるその価額の追徴とは、現実の取引違反の価額の如何にかかわらず、その物件の客観的に適正な価額の追徴を意味し、当該物件が日本専売公社によって定価の公示された製造たばこにあたると認められるものについては、その価額によるべきものであることは、当裁判所の判例(第二小法廷、昭和三一年一二月二八日判決、集一〇巻一二号一八一一頁参照)とするところであって、右判例は、いまなおこれを変更するの要を見ない。

よって、刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤朔郎)

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